医学部小論文・面接講座 

2015.09.10

  • 講習

土曜日の午後に開講されてきた「医学部小論文・面接講座」。1学期最終回の6月27日は、看護師の瀬野佳代氏(三恵病院看護副部長)をお招きし、「チーム医療の中での本当の専門性とは何か—看護師の求める医師像—」と題してご講演いただきました。看護師になったきっかけ、医療現場で出会った人々や、今までのご経験を通じて、医師に期待される役割や姿勢について、高校生にもわかりやすい言葉で丁寧に語りかけて下さいました。医療に携わる方から直接学ぶことのできる機会とあって、受講生のまなざしも普段に増して真剣だったように思います。
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医療システムが高度化した現在、医師自らが理想とする医療を実践するにも、さまざまな医療スタッフの協力が不可欠になっている、と瀬野さんは言います。患者さん一人一人のために、多くの医療スタッフが1つのチームとして機能しなければならないわけですが、その医療チームのまとめ役は、やはり医師という存在をおいて他にないとのこと。「チーム医療」の時代において、医師にはリーダーシップや信頼性がますます求められているようです。チームのメンバーの意見をきちんと聞けること、自分の思いや考えを明確に伝えて理解を得られること、そして何より診断や治療が正確であること…。日常の対話を大切にする中で患者さんや医療スタッフと信頼関係・協力関係を築きつつ、専門に関しても自ら探求心を持って学び続ける姿勢が求められているといえるでしょう。受講生たちはその重責を想像して戸惑いつつも、現場を知る瀬野さんの説得力ある言葉によって、小さな自覚を持ち始めたのではないかと思います。
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病院とは、さまざまな痛み・苦しみを抱える患者さんや、その家族と接する場所。医師をはじめとする医療スタッフは、彼らの感情を受け止める「容器」でなければならない、というお話もありました。病気を診るだけにとどまらない、医師の大切な役割と言えるでしょう。多様な人々と深く関わる日常は、精神面にも大きな負荷をかけるだけに、それを引き受ける医師となるからには、「明確な動機を持とう」とのことでした。担うものの大きさ・重さを意識しながら、さまざまな人の「いのち」に深く関われる喜びを糧に、熱意を持って医師を目指してほしいというメッセージだったように思います。生徒たちも大いに刺激を受け、発奮する契機となったこと、間違いありません。
受講した生徒の感想を紹介します。
A君:「…看護師から見た医師という客観的な意見を聞かせていただき、改めて理想の医師像を考えることができました。これから受験勉強をしていく上で、モチベーションを高めるきっかけになります。…」
B君:「普段の講習でチーム医療について学んだことが瀬野さんのお話の中に詰まっていて、…想像以上にあらゆる方面から患者さんを支えていることに驚いた。周りから頼られるような存在であり、かつ周りを頼ることのできるコミュニケーション力と積極性を持つ医者を目指したい。」
C君:「医師に求められる姿勢を『容器』に喩えられていたのが印象的でした。患者さんの話に真摯に耳を傾け、患者さんのいろいろな面に触れながら、チームで病と向き合っていくという現代の医療の姿を垣間見ることができた気がします。…」
D君:「…医者は常に向上心を持って勉強し、治療方針をいくつも用意できるようにしておく必要があるということを痛感しました。どこの世界においても人の話をしっかり聞き、反省するところはして、その上で自分の伝えたいことを伝えるのが大事だということを実感したので、その力を育てていこうと思います。」
講座を担当する教員も、残念ながら医療現場のことは耳学問に過ぎません。そんな私たちのリクエストを快く受け止め、医療のプロとしてメッセージを届けて下さった瀬野さんに、心から御礼申し上げたいと思います。若い高校生にとって、瀬野さんの言葉の意味が本当にわかるようになるには、まだまだ時間が必要かもしれません。それでも、今回のお話を心に留め、折に触れて自ら問い直すことで、受講した生徒・教員ともども、いっそう成長できるよう努めていきたいと思います。講演のあとも、生徒たちの質問に対して1つ1つ真摯に答えてくださった瀬野さん、本当にありがとうございました。
(「医学部小論文・面接講座」担当教員)